◆少子高齢化・経済危機… 時代の波 乗り越え/初の「有料席」は完売◆
松江市の大橋川などを舞台に約100隻の船団が行き交う船神事「ホーランエンヤ(松江城山稲荷(いな・り)神社式年神幸(しき・ねん・し ん・こう)祭)」が16日の「渡御祭(と・ぎょ・さい)」で幕を開ける。少子高齢化や経済危機が約360年の伝統に影を落とす一方、初めて設ける有料観覧 席はすでに完売。12年ぶりの開催に注目が集まる。(玉置太郎)
船団の中心、「櫂伝馬(かい・でん・ま)船」を出す松江市内の5地区(五大地)が頭を悩ませるのが少子高齢化だ。数十戸でつくる集落で、 男性ばかり30~50人の乗組員を賄うのは難題。福富、矢田、大海崎(おお・み・さき)の3地区では今回初めて、血縁のある地区外の住民が乗船することに なった。
五大地最小の福富地区は、35戸のうち高齢者や女性だけの世帯が4戸ある。38人の乗組員をどう確保するか。「女性を乗船させてはどう か」という議論まで持ち上がったという。地区を取り仕切る野津精一総代長(57)は、「昔ながらのやり方には限界がきている。地区外の協力を取り入れてい かざるを得ない」と話す。
野津総代長は昨年9月、地区外に住む家族・親類で適齢の男性がいないか、全戸に文書で呼びかけた。地区に住む女性の孫にあたる松江西高3 年の森山洸(ひろし)さん=同市西川津町=に、船尾で踊る祭りの花形「采振(ざい・ふ)り」を任せることになった。練習は半年以上。「かなり悩んだが、福 富の力になれたらと思い切って引き受けた。練習でもみんなに声をかけてもらい、輪に入ることができた」と森山さんはふり返る。
会社勤めの住民が増え、練習時間の確保も悩みの種だ。大海崎地区は前回(97年)、毎日午後6時半から練習していた。しかし、今回は週4 回程度に減らし、開始も1時間遅らせた。船の統括役、古藤弘巳伝馬長(55)は「昔は漁業や農業をやっている住民が多く時間にも融通がきいたが、今じゃそ うはいかん。乗組員の勤務先を回って練習への配慮をお願いした」と話す。